会社で仕事の日。
新聞で昨日のシールド事故の記事を読んでいたら、被災者の写真に見たことのある顔があった。
昨年、広島の現場で一緒に仕事をしたシールド工の親方だった。
え・・・広島の現場、まだやってるけど・・・
記事を読んだら、広島から岡山に来たと書いてあった。
去年、広島の現場によく行った。
トラブルもあった。
親方にも、あれがダメだ、これがダメだと言われたもんだ。
でも、親方から言われた「マシンは俺がコクドにしろって所長に言ったんだぞ」って。
だから広島ではがんばったつもりだ。
親方が現場を離れたという事は、もうこの現場は大丈夫だと思ってくれたからだろうか・・・
マシンがダメなままだったら親方もまだ広島にいたかもしれない。
まあ、タラレバの話だ。
シールド工事とは、分割組立できるセグメントという円形のリングを組立て、
シールドマシンがそのセグメントを反力にして前に進む。
セグメント組立と掘進を交互に行い、掘進は一分間に数センチで進む工事である。
セグメントの長さは1m程度であるから1時間もあれば掘進作業が完了する。
セグメントの組立は、エレクたという組立機を利用するため、30分程度で完了する。
この工事で使用されているセグメントは鉄筋コンクリート構造で強度的には十分な強度を持っている。
いかにそれが韓国製といえ、ダメージを受けることはほぼ考えにくい。
掘進する際に邪魔になる前方の土砂は、いろいろな方法で後方に排土される。
排土方法は工事先端部分のシールドマシン直近でズリ缶と呼ばれるバケツに土砂を出し、
そのバケツを坑内に引かれたレールで搬送して排土する開放式と、
シールドマシンから地上まで密閉された配管で排土する2つの方式がある。
前者は開放箇所があるため危険があるが、排土された土砂の処理が安くすむ。
後者は密閉搬送であるため安全であるが、排土された土砂に処理が必要でコスト高になる。
昨日も書いたけど、シールド工事は危険な仕事ではない。
特に日本はシールドの工事が多く採用されており、経験もあり、技術が進んでいる。
施工をしていた建設会社は日本でも知名度も技術もトップクラスの会社。
実際の作業をする下請けの会社も、業界では有名な会社。
これだけ見れば事故が起こるとは思えない。
しかし、工事の内容を見ると、土被り5mの施工、海底下での泥土圧採用、さらにズリ排土。
自分は機械屋だから施工にはそこまで詳しくないが、それでも疑問を感じる内容。
これらのキーワードから「コストダウン」の文字が透けて見える。
いや、事故がどのように発生したのかはだれにもわからない。
想像だけでコストダウンが安全に優先したという事は言えない。
でも、「金で買える安全は買っておけ」という言葉を聞いたことがある。
全くそのとおりだと思う。
現在のシールド工事を含む工事の受注金額が著しく低下している。
もう低価格を競うのはやめてほしい。
安全を競ってほしい。